こんにちは。矢野教室長高原です。

今年は中学校の教科書改訂の年、新しい教科書での授業(実際にはその教科書に準拠した教材での授業)が始まったのですが、変わりように驚くことがいろいろあります。

そこからひとつ、今回は中学3年生の理科(生物)のお話を。

 

中学3年生の理科で「遺伝」を学習します。

生物のもつ形や性質などの特徴を「形質」と言います。その形質が子や孫、さらにそれ以下の世代に伝わることが「遺伝」です。

植物において、自家受粉(ひとつの花の雄しべで作られた花粉が同一の花、あるいは同一の株にある雌しべについて受粉が起こること)を繰り返すことで何代も同じ形質を持つ子孫ができることを「純系」といいます。

その純系において、同時には現れない異なる形質のことを「対立形質」と呼びます。教科書では花の色(「白い」「赤い」とか)であるとか、種子の形(「丸い」「しわがある」とか)などが取り扱われています。

この対立形質の純系どうしをかけ合わせた場合、そこからできる子の形質が、すべて一方と同じ形質になってしまうことがあります。このとき現れる形質をこれまでは「優性(ゆうせい)形質」、現れなかった方の形質を「劣性(れっせい)形質」と表記していました。(すべて一方と同じになるのは極端な場合で、実際には稀なケースということですが)

それが、今年からの新しい教科書では「優性」と「劣性」という用語の名称が、それぞれ「顕性(けんせい)」と「潜性(せんせい)」という名称に変更されているのです。

 

なぜ、「優性」と「劣性」の名称が変更されたのでしょう?それは、漢字の与える「誤解」を払拭するためだということのようです。

「優性」の「優」は「優(すぐ)れている」、「劣性」の「劣」は「劣(おと)っている」の意味にとらえてしまいがちです。しかし、実際には「優先的な現れやすさ」を示すための「優」であり、その反対になるので「劣」を当てていただけのことで、決して形質の「優劣」を表した言葉ではないのです。

そういう誤解を避けるために、新しい教科書からはそれぞれを「顕性」と「潜性」にと表記することになったようです。

「顕」という字は訓読みが「あきら(か)」で、「顕著」「顕在」といった言葉があるように、「はっきりしている、目立つ」といった意味があり、「潜」は訓読みが「ひそ(む)」「もぐ(る)」ですし、「潜在(せんざい)」といった言葉があるように、「表面には現れずに、内側に隠れている」といった意味があります。ということは、形質の「現れやすさ」「現れにくさ」を表現するにはこちらの方が合っているように思えます。

 

今年これらを学ぶ中学3年生の生徒さんは「顕性」「潜性」を素直に受け入れるのでしょうが、しかし長年「優性」「劣性」を使っていたわたしにはまだ違和感が。。。。

生徒さんに何度も「違うよ!」と指摘を受けることでしょう。こわいこわい。